ICTを導入することで介護はどう変わる?

2019.11.07

  • 介護のデジタル化
#基礎知識
ICTを導入することで介護はどう変わる?

2017年4月に開催された未来投資会議において厚生労働大臣がある資料を配付しました。それはデータヘルス改革を通して国が目指している医療、介護分野における将来像を示したもので、「国民が世界最高水準の保健医療サービスを効率的に受けられる環境を整備」するための方向性を明らかにしています。

そのなかで最先端技術の活用、ビッグデータの活用、それとICTインフラの整備が明記され、介護報酬の改定においてもICT化を見据えての制度を構築する流れが伺えるものでした。このように国が本腰をいれて、医療・介護分野でのICT活用を進めようとしています。ICTを活用することで介護が抱える課題はどう変わるのでしょうか。この記事では、具体的にどのような活用例が考えられ、どのように課題解決されるのかを探ってみたいと思います。

介護現場が抱える課題とは

ICTの活用によってどのような未来が訪れるのかを見る前に、現在、介護現場が抱えている課題を改めて確認しておきましょう。

老年人口の増加

内閣府の調査によると平成29(2017)年10月1日時点、日本の総人口1億2,671万人のうち、65歳以上の高齢者の割合は27.7%にものぼっており、超高齢化社会となっています。また、昭和40年(1965)では、現役世代10.8人で65歳以上の高齢者を1人支えていたものが、令和元年(2020)には現役時代2人で高齢者1人を支えているのです。さらに2060年には1.2人で高齢者1人を支えていかなければなりません。

日本人の平均寿命は年々伸びており、2016年現在では男性80.98歳、女性87.14歳となっています。また、平均寿命が伸び続ける一方、介護を必要とせず自立した生活を送れる「健康寿命」は、2016年現在、男性で72.14歳、女性では74.79歳となっており、平均寿命との差は男性では6.84年、女性では12.35年です。この平均寿命と健康寿命の差が長ければ長いほど、さらに多くの介護の人材が必要となることはいうまでもありません。

人材不足(人材確保と人材教育)

少子化が進んでいる日本では、今後介護を必要とする高齢者が増えていくなかで、介護人材の不足はさらに加速していくことは明らかです。平成30年の厚生労働省による調査結果「福祉・介護人材の確保に向けた取組について」によると、全体の求人倍率より介護分野の有効求人倍率は依然と高い水準にあります。

また、この調査によると、平成28年度(2016)には約190万人だった介護人材は、平成12年度(2000)より3.3倍増えているものの、2025年には245万人が必要と見込まれており、現在の介護人材より約55万人も多くの人材を確保しなければならなくなります。

そして、将来にわたり多くの介護人材の確保が厳しい状態であることは、公益社団法人介護労働安定センターが実施した労働実態調査からも伺えます。その数値によると、現在でも67.2%の事業所で人材が不足しているとしています。さらに、人材が不足している介護現場では、新しい職員に対し一人ひとり丁寧に指導できている事業所が少ないといわれています。そのため、まだ現場を十分に知らない職員に対して即戦力を求めざるをえない、経験が必要な食事介助や入浴介助をいきなり任せざるをえないなど、人材教育の不足を懸念する声が多く聞かれます。

働き方改革への対応

2019年4月に施行された働き方改革では、労働者の心身健康維持のため残業時間の上限規制や有給休暇の5日以上の取得などが義務付けられました。これまでの人員不足に加え、日々の人員基準を満たすために有給休暇が取りにくかった事業所でも、今後は経営の充実を図り人員の確保と持続性のある施設運営が求められます。そのためには業務の効率化、生産性の向上を推進していく必要があるといえるでしょう。

ICT導入のメリット・デメリット

少子高齢化によって労働人口が減っていくなかで、高齢化による介護需要はますます高まるでしょう。そこで注目されているのがICTを活用した業務の効率化です。

ICTとはInformation and Communication Technologyの略で「情報通信技術」を指し、コンピューター技術の活用に関することをいいます。とりわけ人材不足が深刻な介護業界ではICTを積極的に活用していく方向へと舵を切っており、業務の効率化と同時に質の担保を図ることを目的としています。では、ICTを活用するにあたって、どのようなメリット・デメリットがあるのかを見ていきましょう。

メリット(活用例・ICT化でできること)

業務の効率化

介護現場における事務作業のほとんどは未だに手作業によることが多く、業務の効率化とは程遠いといわざるを得ません。そのためICT化によって得られる最大のメリットは、記録業務の事務作業の軽減といえます。

たとえば訪問介護では、訪問先からホームヘルパーがタブレットなどを利用して介護記録を入力したり、瞬時に情報共有を行ったりすることができます。また、手書きでの書類作成が多いなか、タブレットなどのデバイスは操作が簡単なうえ、移動中などの空き時間を活用することが可能となり職員の負担を軽減できるでしょう。さらにスタッフは時間的にも身体的にも余裕ができることからケアの質の向上につながる可能性が高いと考えられます。

多職種との情報の連携

これまで経験でしか見いだせなかった介護方法が、訪問先から送られてきた情報を元にICT機器で分析することによって、ニーズに応じた科学的な介護へと変わっていくでしょう。

さらに、職員全員で情報を共有できると、新人職員やベテランに関係なく適切な対応が可能となります。また、地域全体で介護を支える地域包括ケアシステムでは、介護事業以外の医師や看護師などさまざまな職種との連携が必要となります。これまでは介護現場の情報を一旦持ち帰りFAXなどで情報を共有していましたが、ICTを活用することによって、各々が随時情報を把握することが可能になるのです。

働き方改革につながる

3Kともいわれている厳しい介護職ですが、ICTを活用することで業務の負担軽減につながり、ストレスによる離職率の低下が期待できます。また、有給休暇を取得しやすい環境となり、スタッフの健康管理のうえでもメリットが多いといえるでしょう。さらに事務作業にあてていた時間が減少することで、新人教育により多くの時間を使うことができるようになり、若手人材の確保にもつながりやすくなります。

デメリット(注意すべき点)

コストがかかる

ICTを活用する最も大きなデメリットは、導入のためのコストがかかることです。施設内のインターネット環境を整える費用や、パソコンやタブレットなどの購入費用が必要になります。また通信機器には通信費用のほかに年間保守費用などの維持費がかかるので、金額が大きくなれば経営を圧迫しかねません。

使いこなせない場合がある

さまざまな年齢のスタッフがいるなか、パソコンやタブレットなどのIT機器を誰もが使えるようになるまでの教育が不可欠です。万一、使いこなせなければせっかく導入しても無駄になってしまいます。操作スキルの低い人は、慣れるまでストレスがかかってしまうこともあるでしょう。

個人情報管理が必要

介護の現場では一部医療行為にあたるものがあり、個人情報保護のガイドラインを厳守することが求められています。パソコン上に保存してある個人情報をどのように保護するかなど、事業所での個人情報の管理方法を確立する必要があるでしょう。

 ICT活用でより効率の良い介護現場へ

少子高齢化が加速度的に進む現在において、介護・医療分野での人材の確保と作業の効率化は急を要する課題です。ICT活用によって事務作業や情報共有にかかる作業が効率化されることで、現場の人員不足や人材教育の不足の解消が期待できます。さらに、機械ができる作業を機械化することで、現場のスタッフが人間だけができる介護・医療の業務に適切な時間を割けるようになることで、サービスの質が向上し、介護を受ける方にとってもメリットが得られると期待されます。

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