2024.07.08
- 床ずれケア
小松市民病院(石川県小松市)では、床ずれ防止をサポートするためにエアマットレス「ここちあ利楽flow」(パラマウントベッド社)を導入しています。実際に使用する中で、患者さんの反応や看護ケアはどのように変わっていったのでしょうか。同院で働く看護師の皆さんに、製品の性能や使用感について伺いました。
【お話を伺った方々】
若林 様(小松市民病院 看護師長)
八日市 様(小松市民病院 副看護師長)
畑中 様(小松市民病院 摂食嚥下障害看護認定看護師)
小町 様(小松市民病院 皮膚・排泄ケア認定看護師)
【病院概要】
1950年11月に石川県厚生連農業協同組合から譲渡を受けて市立小松病院が設立され、1989年4月に新築移転して名称を国民健康保険小松市民病院に改称しました。石川県の南加賀医療圏(小松市・加賀市・能美市・能美郡川北町)人口約 22万人の中核医療機関で、地域医療支援病院、救急告知医療機関、地域がん診療連携拠点病院などさまざまな機能を担っています。コロナ禍においては、第二種感染症指定医療機関として専用病棟を確保したり、2024年1月の能登半島地震では災害拠点病院として被災した医療機関や傷病者への支援に注力したりと、様々な側面から地域を支えています。診療科は28、病床数は340床(一般病床300床、精神病床26床、結核病床10床、感染症病床4床)です。
【看護部概要】
2024年3月1日現在、看護職員は298人(看護師292人、准看護師6人)、看護補助者は48人です。離職率(正規職員)は約5%で、常に経験豊富な看護師が側にいて、心強く、頼れる環境であり、当院の強みと考えリクルート時のアピールポイントにしています。特に子供を持って働く看護師が80%ですので、お互い支え合い、思いあいながら働き続けられる看護部です。
患者さんの「良い姿勢」を全自動でサポート
――実際に病棟で使ってみて、「ここちあ利楽flow」の性能をどのように感じていますか。
若林 食事の際などベッドを背上げしたときに、本製品の特徴を実感することが多いです。通常、ベッドを背上げし続けていると徐々に患者さんの姿勢が崩れてしまうため、姿勢を整え直す必要があります。しかし、「ここちあ利楽flow」にはバックサポート機能※1が備わっているので、ベッドを起こした直後からすでに良肢位が取れています。なおかつ、その姿勢を自動で維持できるというところに驚きました。
畑中 実際に私も「ここちあ利楽flow」に寝てみたことがあるのですが、バックサポート機能が身体を包み込むようにサポートしてくれるので、座位時の上半身のふらつきや傾きがかなり抑えられています。本製品のおかげで、患者さんは安楽な姿勢を保ちながら、自分のペースで食事を楽しみやすくなりました。同時に、ベッドから転落するリスクも低減できるため、看護師も大きな安心感を得られています。
八日市 車椅子からベッドに移乗するときなどにも、この安定感が生きているように感じます。移乗後に患者さんがお尻を動かす際、座り直しのための介助がほとんど必要なく、とても動きやすそうだったことが記憶に残っています。
小町 しっかりと厚みはあるけれど、余計な沈み込みが少ないマットレスであることは、褥瘡回診で病棟を回っているときにも感じました。自動しっかりモード※2が備わっているため、患者さんの離床の動きを検知して、1分もすれば患者さんが端座位を取りやすい状態になっています。必要な機能が自動化されているおかげで、患者さんの動きがスムーズなだけでなく、設定に必要な時間や待ち時間が短縮されて、看護スタッフの業務効率化にもつながっています。
病棟になくてはならない、頼もしいエアマットレス
――「ここちあ利楽flow」の導入後、床ずれのケアにおいてはどのような変化がありましたか。
八日市 夜間の体位変換が最小限になり、患者さんにとっても看護スタッフにとっても負担が軽くなりました。どの病院にいるどの医療スタッフも、夜間は患者さんの睡眠を妨げたくないと思っているはずです。しかし、床ずれのリスクが高い患者さんにはどうしても体位変換が必要ですから、「掛け布団をめくったら寒いだろうな」「身体をそっと動かせば起きないだろうか」などと、夜勤帯の看護スタッフは毎回葛藤しながら業務に当たっていました。本製品のスモールフロー機能※3を活用してからは、寝ている患者さんに違和感を与えずに除圧できるようになりました。床ずれ防止と患者さんの睡眠確保、両方をかなえてくれています。
※3 スモールフロー機能:4つのスモールフローセルが15分間ずつゆっくりと膨張と収縮を繰り返し、小さな体位変換を自動で繰り返すことにより、同じ部位に圧力がかかり続けることを防ぐ機能。
若林 体勢を保持するための当て枕を使わずに済むようになったことも変化の一つです。以前は患者さんによって、良肢位を保持するために当て枕を使うことがあったのですが、姿勢がずれたときに位置の調整が必要になるなどの手間が発生していました。ところが、本製品のバックサポート機能は、当て枕を使う回数や個数を減らすことにつながっています。患者さんも、より自然体で過ごせているように見えます。
――実際に本製品を使用されている、患者さんの反応はいかがでしょうか。
畑中 これまでのエアマットレスでは、「家のベッドに比べてフニャフニャとしていて、柔らかすぎて嫌だ」という患者さんからの不満の声が少なからずありました。しかし、本製品に対するネガティブな反応は今のところゼロ。どの患者さんも違和感なく使用でき、心地よく過ごせていることの表れではないかと思います。
八日市 呼吸のつらさを訴える患者さんに、「ここちあ利楽flow」だからこそ安楽を提供できたケースがあります。その方は、少しでも呼吸が楽になるように端座位で過ごす時間が多かったのですが、せん妄などの症状が見られるようになったこともあり、転倒・転落を防ぐためベッド上で座位を取る必要性が出てきました。一般的にベッドを背上げすると、腹部に圧迫感があったり、身体全体が下がって足先が窮屈になったりすると思います。しかし、本製品のエアセルは一本一本分離した構造で、ベッドへの追従性が高いため、ベッド上でも無理のない体勢で快適に過ごしてもらうことができました。患者さんの安全を確保しながら安楽を保つことができたエピソードとして、とても印象に残っています。
――看護スタッフの皆さんからは、その他にどのような声が届いていますか。
畑中 ベッドとマットレスのコードが一本化されているところも好評です。以前は、両者のコードが別々に存在したので、延長コードを用いてコンセント口を増やさなければならない病棟もありました。細かい部分ではありますが、コードが長ければ患者さんの転倒リスクが高まりかねないこともあり、意外に重要なポイントではないでしょうか。電源が1つで済み、ベッドを配置する際の自由度が高いという意味でも、非常に重宝しています。
小町 マットレス選びに迷いがなくなった点もうれしいですね。当院では数種類のマットレスを用意し、患者さんの状態に合わせて使用しています。どの患者さんにどのマットレスが適しているかを見極めることは想像以上に難しく、多くの看護スタッフにとって悩みの種になっていました。その点で「ここちあ利楽flow」は、まったく動けない方から座位になって食事を摂れる方など、状態や場面を問わずどのような患者さんにも使っていただける「守備範囲の広い」マットレスです。しかも、体重設定が自動検知で行われ、20~180kgまでの幅広い範囲を判定してくれます。看護スタッフがあらためて研修を行うなどしなくても、忙しい現場ですぐ活用できる点がうれしいです。
若林 今や病棟にとってなくてはならない、とても頼もしい存在です。こうした製品の機能をうまく活用しながら、患者さんによりよい看護を提供できるよう、看護部一同ますます頑張っていきたいと思います。