褥瘡はなぜできる?リスク因子を知って、適切なケアを心がけよう

療養生活が長くなると、体力も低下し、本来の病気以外のさまざまな症状を引き起こすことも珍しくありません。褥瘡もその1つですが、褥瘡を放置していると感染が拡大し、さらに別の症状が発生してしまう可能性が高まります。そこで、褥瘡を防ぐために褥瘡のできる仕組みを知り、リスク因子を理解することが必要です。今回は褥瘡に対する理解を深め、適切なケア方法について考察していきます。

褥瘡とは?

褥瘡ができた際に適切なケアをするためには、まず褥瘡がどういったものなにかを正確に理解する必要があります。日本褥瘡学会は2005年、褥瘡を「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる」と定義しています。

健康な状態であれば、自分で楽な姿勢を取ったり、寝ていたとしても無意識に寝返りをうったりして、身体の同じ部分を長時間圧迫してしまうことはありません。しかし、病気の症状によっては自分で身体の位置を変えることができず、長時間に渡り身体の同じ部分に外力が加わる状態になることがあります。そうなると、その部分の皮膚の細胞に十分な血流が届かず、酸素や栄養が十分に行き渡らなくなります。その結果、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまったりといった症状が表れます。これが褥瘡です。

特に褥瘡ができやすい病気としては、うっ血性心不全、骨盤骨折、脊髄損傷、糖尿病、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患などが注意すべきとされています。また、褥瘡ができる要因として考慮すべき疾患は、悪性腫瘍、アルツハイマー病、関節リウマチ、骨粗しょう症、深部静脈血栓症、パーキンソン病、末梢血管疾患、尿路感染症など。それ以外の病気でも療養生活が長引いて栄養状態が悪くなるとできやすくなります。

そして、ほかにも、寝たきりの高齢者、排泄物や汗により皮膚が常に湿った状態になっている、むくみやすい、抗がん剤やステロイドなど薬の副作用で免疫力が低くなっている人も褥瘡ができやすい環境にあることを認識しておかなければなりません。こうした人は、圧迫はそれほど強くなくとも摩擦やすれ程度の刺激が繰り返されることで褥瘡ができるケースが多いようです。

また、褥瘡ができやすい身体の部位は、基本的には強く圧迫されやすい骨が付きだした部位ですが、それ以外にも寝ている際や座っている際の身体の向き、姿勢により異なります。仰向けに寝ている場合は後頭部、肩甲部、仙骨部、かかとなどにできやすくなります。横を向いて寝ている場合は、耳、肩、ひじ、腸骨、大転子、ひざ、くるぶしなど。そして、座っている場合は、背部、座骨、尾骨などが褥瘡のできやすい部位です。

褥瘡ができる仕組み

褥瘡がどういったものであるかがわかったところで、次はなぜ褥瘡ができるのか、その仕組みについて見ていきます。基本的には前項でも触れたように、外力(圧力とすれ力)により血流が阻害されて起こるものです。しかし、より細かく見ていくと、阻血性障害も含め次の4つの機序が複合的に関与するとされています。

1.阻血性障害

グルコースの供給不足、嫌気性代謝亢進から、組織内の乳酸蓄積が起こりpHの低下。微小血管が閉塞し、組織が阻血壊死状態に陥ります。

2.再灌流障害

阻血による炎症性サイトカインやフリーラジカルなどの組織障害性物質が蓄積。そして、阻血性障害で一度途絶した血流が再開した際、蓄積された物質が阻血部位より広がり組織障害をさらに悪化させます。

3.リンパ系機能障害

リンパ灌流がうっ滞することで老廃物や自己分解性酵素が蓄積されて引き起こされます。

4.機械的変形

外力が身体に直接的に作用し、細胞のアポトーシス、細胞外マトリックスの配向性に変化が起こるものです。

これらのことが起こることで、褥瘡が発生し、さらに悪化していくと最終的には細胞死、組織障害へとつながってしまいます。

褥瘡のリスク因子はどんなもの?

ほかの病気と同様に褥瘡ができるリスク因子も単一のものではありません。「褥瘡って何?」でも褥瘡ができる要因について触れましたが、ここではさらに詳しく見ていきます。褥瘡の場合は大きく個体要因と環境・ケア要因の2つに分類することができ、それぞれの詳細は次の通りです。

個体要因

基本的な日常生活での自立度が低い、病的骨突出、関節の拘縮、栄養状態が悪い、むくみ、多汗、尿・便失禁などが挙げられます。特に高齢者でやせ型のかたは、骨突出部に褥瘡ができやすい傾向があります。

環境・ケア要因

病気や身体の状況により、寝ている際に自分で体位変換ができない、体圧分散用具を使っていない、頭側挙上・下肢挙上、座位保持といった姿勢、スキンケアが疎かになっている、栄養補給が足りていない、リハビリテーションができていない、介護力が足りないといったことが挙げられます。

さらにこれらのリスク因子が発生しやすい状況別にまとめると次のようになります。

寝たきりの状態(高齢者)

自力で体位変換ができない、低栄養、廃用性萎縮の状態になっている、寝たきりのためスキンケアが困難、ネグレクトなど

急性期

発熱や疼痛がある、知覚が低下している、意識障害を起こしているなど

周術期

術前の安静、術中の体位、手術時の血圧低下、カテコールアミン、術後の疼痛除去など

特殊疾患・状態

脊髄損傷、神経変性疾患、精神疾患、鎮静薬の使用時、急性薬物中毒、糖尿病、血液透析時など

終末期

疼痛、呼吸困難、低栄養時など

褥瘡の適切なケアとは

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褥瘡は放置していると重症化し、さまざまな感染症を招いてしまうことがあります。治療は、3つに分けられます。

保存的治療

外用薬剤やドレッシング材を使って治療を行います。

物理療法

パルス洗浄・吸引、超音波、水治、電気刺激によって治療を行います。

外科的治療(手術療法)

デブリードマン、陰圧閉鎖療法

このなかから、状況や症状に合わせ適切な方法を選択します。

褥瘡は発生時期により、急性期と慢性期があります。

急性期

発生直後から1~3週間程度の時期です。まだ局所の病態が不安定で急性炎症反応が強く出るため、発赤、紫斑、むくみ、硬結、水疱、びらん、浅い潰瘍といった症状が短期間に次々と出現します。また、痛みを伴いやすいのもこの時期の褥瘡の特徴です。

この時期のケアは、適度な湿潤環境を保持しつつ、褥瘡部を透明ドレッシング材で保護する保存的治療が一般的です。

慢性期

急性期を過ぎた時期で、病態変化が少なくなった状態です。ただし急性期と慢性期の分岐点を正確に判断することは難しいため、急性期と同じ治療を進めつつ、褥瘡の深さを見極めていきます。


この時期のケアのポイントは、まず、浅い褥瘡なのか、深い褥瘡なのかを判断することです。

浅い褥瘡の場合:基本的には褥瘡の保護と適度な湿潤環境の保持を行います。ドレッシング材や外用薬を使用します。

深い褥瘡の場合:治癒の前提となる、壊死組織の除去を徹底して行うことです。そのうえで、感染や滲出液、ポケットなどが確認されるときは、それらの抑制のための治療を行います。

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