政府も推進。介護ロボットの普及で現場を変える

2019.11.08

  • 介護のデジタル化
#基礎知識
政府も推進。介護ロボットの普及で現場を変える

現在の日本は、4人に1人が65歳以上という超高齢化社会。高齢化は今後もますます進み、介護を必要とする人の数も増え続けると予測されています。

一方、介護現場では、人手不足が深刻化しています。厚生労働省の推計によると、2025年度には介護職員が約38万人不足する恐れがあるとのこと。

問題解決につながる切り札として、注目を浴びているのが「介護ロボット」です。介護ロボットの普及が進めば、人手不足の解消はもちろん、介護者の負担軽減や働き方、介護環境の改善にもつながると考えられています。介護ロボットを巡る状況と、普及への課題について探ってみましょう。

介護ロボットとは

そもそも介護ロボットとは、どのようなものなのでしょうか。

まず「ロボット」の定義を見てみると、以下の3つの要素を持った、知能化した機械システムとされています。

  • 情報を感知する(センサー系)
  • 判断する(知能・制御系)
  • 動作する(駆動系)


そのうち、高齢者や要介護者の自立支援や介護にあたる人の負担軽減に役立つものを、「介護ロボット」と呼びます。

政府による支援と現状

日本政府は2013年6月、「日本再興戦略」に「ロボット介護機器開発5ヵ年計画」を盛り込み、介護ロボットの開発と導入に戦略的に取り組むことを決定しました。経済産業省と厚生労働省が連携し、介護ロボットを開発するメーカーや研究機関への補助金の交付、介護施設が介護ロボットを導入する際の費用補助、試作ロボット機器の実証実験の推進、開発現場と介護現場の意見交換の場の提供など、さまざまな取り組みを進めてきました。

ただ、まだまだ活用例は少なく、実用化には課題も残っていて、一般的に普及しているとはいいがたいのが現状です。

介護ロボットに求められていること(開発重点分野)

経済産業省と厚生労働省は、ロボットの介護利用においてニーズが高く重点的に開発支援していく分野として、次の6分野13項目を定めています。

ロボット技術の介護利用における重点分野

1.移乗支援

  • 装着:ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器
  • 非装着:ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器

2.移動支援

  • 屋外:高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器
  • 屋内:高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器
  • 装着:高齢者等の外出をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援機器

3.排泄支援

  • 排泄物処理:排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置調節可能なトイレ
  • トイレ誘導:ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器
  • 動作支援:ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援する機器

4.見守り・コミュニケーション

  • 施設:介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
  • 在宅:在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
  • 生活支援:高齢者等とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器

5.入浴支援

  • ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器

6.介護業務支援

  • ロボット技術を用いて、見守り、移動支援、排泄支援をはじめとする介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、高齢者等の必要な支援に活用することを可能とする機器

介護ロボットによる補助

現在、製品化されている介護ロボットには、主に、次のようなものがあります。

介護支援型ロボット

介護支援型ロボットとは、介護施設などで働く介護者をサポートするために開発されたロボット機器を指し、ベッドから車イスへの移乗の際などに介護者の体にかかる負担を軽減します。例えば、介護者が装着して使うロボットスーツ「HAL(R)腰タイプ介護支援用」(装着型)、“お姫さま抱っこ”のように要介護者をシートごと抱き上げる「ロボヘルパー SASUKE」(非装着型)などがあります。

自立支援型

高齢者や要介護者の日常の活動を補助するロボット機器です。電動アシストで歩行を支援し、膝への負担を軽減するロボットアシストウォーカー「RT.2」、軽量で小回りのきく電動車椅子「WHILL Model C」などがあります。

コミュニケーション・セキュリティ型ロボット

  • コミュニケーション型ロボットとは、人工知能を搭載していて、要介護者と会話などのコミュニケーションをとることができる機器を指します。例えば、小型ヒューマノイドロボットの「PALRO(パルロ)」は、おしゃべりの相手になるほか、高齢者介護施設での音楽や体操などのレクリエーションの進行、出迎え・見送りも担うことができます。
  • セキュリティ型ロボットは、センサーで要介護者の動作を検知する機能を備えた機器。多種の製品があり、老人ホームなどの高齢者向け施設では、実際にセキュリティ型の介護ロボットが入居者の見守りに活躍しています。その他、認知症の人の道迷い防止、一人暮らしの高齢者の見守りといった用途での活用も想定されています。

介護ロボット導入のメリット

介護ロボットを導入するメリットとしてまずあげられるのが、介護施設で介護にあたる人の身体的な負担の軽減です。特に移乗介助は、介護者の腰に負担がかかりやすく、腰痛に悩まされる人も少なくありません。移乗動作を支援する介護ロボットを使うと、介護者の体への負担を大幅に減らすことができます。その結果、精神的なストレスが軽減し、気持ちに余裕を持って要介護者に接することができるようになるというメリットもあります。

介護の現場は介護を必要とする方と向き合い、その人らしい暮らしを支えることを担いますから、心身共にストレスを感じやすいといえます。そのため、なかなか就職希望者が集まらない現状でもあります。介護ロボットの導入で、業務の負担軽減が見込めれば、労働環境の改善は図れると考えられます。

さらに、介護ロボットを使い、一人の介護者ではできなかった作業を一人でこなせるようになれば、業務が効率化、人手不足の解消などが図れます。

さらには、要介護者が、体重を支えてもらい移動の介助をしてもらうなどの場合でも、介護をする人に対して遠慮したり、介助してもらうことに対して引け目を感じたりせずに介護してもらえる可能性が高まることも、メリットの一つといえるでしょう。

介護ロボット導入の課題(デメリット)

一方で、介護ロボットの導入には、数々の課題が残されています。

第一の壁が、コストの問題です。介護ロボットの普及率がまだ低いため、一台あたりの単価が高く、介護事業者側では導入に慎重にならざるを得ません。加えて、導入にかかる労力や導入したあとの操作の難しさ、継続的なメンテナンスのコストなどもネックになっています。

また、多くの介護ロボットが、現場では使いにくかったり役立つ場面が限定されていたりと、介護者が本当に求めている実用性をまだ十分には備えていないことも大きな課題です。

原因として考えられるのは、開発するメーカーと現場のニーズとの間にギャップがあることです。誤動作や故障の可能性があるなど、介護ロボットの安全面への不安を指摘する声も少なくありません。

実用化に向けて

高齢者が増え続けるなかで、介護現場の人手不足の解消と介護者の負担軽減は、介護現場にとっても国にとっても急務といえます。

しかし、現状を見る限り課題はまだ多く、普及が進んでいないのが現実。根本には、介護者側と利用者側の双方に安全な介護を支える道具として介護ロボットを使用することの有効性や、そうした介護ロボットをどのように使用し、どういうケースに導入するかなどの説明が不足しているという現状があり、まだ理解が深まっていないという状況がありそうです。

実用化と普及に向けて、政府は開発の補助、安全基準の作成を含めた環境整備に力を入れるとともに、相談窓口の設置、実証の場の整備、モニター調査の実施、普及啓発活動といった取り組みも推進しています。

実用化と普及が進めば、介護者側と要介護者側、どちらにとっても負担軽減になる可能性のある介護ロボット。今後も、国や自治体によるいっそうの支援の強化、メーカーの開発努力が望まれます。

同時に、介護者や介護現場が介護ロボットへの理解を深め、目指す介護のあり方と比較して現状を見直すことも必要でしょう。それにより現場にどんな介護ロボットが必要なのかが明らかになり、導入への道筋が見えてくるはずです。

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