八幡大蔵病院(福岡県北九州市)は2021年1月に全てのマットレスを更新。選ばれたのは防汚性に優れたマットレス「エバーリーフSG」と、全自動エアマットレス「ここちあ利楽flow」でした(いずれもパラマウントベッド社)。何に注目して選定し、導入後はどのような効果があったのでしょうか。同院の看護師の皆さんに、導入の経緯や使用感について伺いました。
【お話を伺った方】
左から
吉田修一郎 様(八幡大蔵病院 認知症治療病棟 看護師)
鎌田義也 様(八幡大蔵病院 精神一般病棟 看護師)
坪井渡 様(八幡大蔵病院 精神療養病床 看護師)
抜群の防汚性で看護師の負担を大幅に軽減
――まずは貴院の特徴や地域で果たす役割などについて教えてください。
坪井:当院は1966年、精神科・神経科・内科の病院として開設しました。時代のニーズにこたえながら、精神科医療および認知症医療を通して長きにわたり地域医療に貢献してきました。近隣の医療機関や公的機関とも密に連携し、急な入院や外来の依頼にも柔軟・迅速に対応して、地域からの厚い信頼を得ております。現在は、精神一般病棟60床、精神療養病床60床、認知症治療病棟60床の計180床が稼動しております。
――貴院で「エバーリーフSG」を導入したきっかけを教えてください。
カバーに強度の高い生地と糸を採用し、撥水加工を施すことで、安全性、防水/防汚性を高めたリバーシブルマットレスです。
坪井:当院で使用しているマットレスは、5年ごとにレンタル契約を更新してきました。ちょうどその契約が切れるタイミングを前にして、より防汚性に優れた製品に切り替えようと考えたことがきっかけです。
排泄が自立していないためにオムツを使っている患者さんの中には、疾患の特性やオムツの不快感から、自らオムツを外してしまう方もいます。私たちは患者さんの思いや行動をできるだけ尊重したいと思っていますが、1日に何件も発生するので、排泄物で汚れたベッドの清掃や着替えにかなりの時間を費やしていました。また、すぐには手が離せず対応できないときもあるので、患者さんを待たせてしまうことに対して日々悩ましく感じていました。
そこで、マットレスの防汚性に注目したわけです。職員総出で寝心地を確かめながら比較検討し、候補とした4製品の中から最終的に選んだのが「エバーリーフSG」でした。値段だけを見たら決して安いとはいえませんが、他のどの選択肢よりもカバーの品質が高く、「長い目で見るなら価格よりも性能で選んだほうがいい」「これなら汚れても対応しやすそう」という意見が集まりました。
――実際に臨床で使ってみて、日々の業務や患者さんへのケアに変化はありましたか。
吉田:「エバーリーフSG」の汚れに対する強さをひしひしと感じています。これまで使っていたマットレスは布地だったので、汚れが中まで浸透してしまい、洗って乾かすのがとても大変でした。院内で対応できないほど汚れが強いときは院外のクリーニングに出すのですが、この場合も時間やコストがかかっていました。
本製品は、カバーの表面に撥水加工がしてあり、あっという間に汚れを弾いてくれます。導入以降、製品自体に汚れがしみ込んだことは一度もありません。そのため、ファスナーのロック機能(患者さん自身がファスナーを開け、マットレスを誤食・誤飲しないよう予防するもの)を解除してカバーを外す手間も発生していません。汚れてしまったとしても、サッと拭くだけで対応できるので、業務負担がかなり軽減されています。また、水滴を通しにくい止水ファスナーが二重になっているので、製品自体をシャワーで洗うこともできます。看護助手たちも「手入れがとても楽になった」と口々に話しています。
坪井:横シーツ類が不要になったことも、業務負担の軽減やコスト削減につながっています。以前は、汚れがしみ込まないように、ベッドパッド、横シーツ、ベッドシーツを重ねて敷いていました。敷くものが多いほど、シーツ交換の手間や洗濯の量が増えます。しかも、マットレスと同じく、汚れがひどい場合は院外クリーニングを利用していました。当院の事務課長はコスト削減の糸口を模索していたようでしたが、本製品の導入が一気に解決してくれたと思います。
また、汚れを発見したときの看護師の精神的な負担もかなり減りました。ベッドが汚れてしまう状況は時間帯を選ばず、少人数で対応している深夜帯であっても毎回3件以上は発生しています。真夜中に患者さんのシャワー浴を介助したり、寝衣交換やベッド清掃をしたりすることは、病棟が落ち着いていれば問題ありません。ただし、早朝5~6時となると話は別です。この時間は深夜帯が終わりかけるタイミングで、患者さん60人の排泄介助、朝食前の体位調整、ナースコール対応、さらには日勤帯への引き継ぎ業務を看護師3人で必死に行っています。そのため、夜間に気付かなかったベッドの汚れを明け方に発見した瞬間は、思わず呆然としてしまいます。どうにか時間を割いてシーツ交換などを行いますが、本製品ならサッとベッドを拭いて、ポンと新しいシーツを置くだけで、すぐに臥床できる状態に戻すことができます。この天と地ほども違う対応の変化に救われた気持ちになった看護師は多いと思います。
――その他の製品特徴について良かった点はありますか。
鎌田:硬さの面でも使い勝手の良さを感じています。製品の両端がしっかりと硬いので、身体が沈み込むことがありません。患者さんがベッドサイドで端座位になるとき、安定した姿勢を保つことができます。ささいなことのように感じますが、ふと身体を動かしたときに患者さんの安全・安心を守ってくれるのは、このような細やかな配慮なのです。
また、消毒液に対する耐久性の高さにも満足しています。当院では、感染予防の一環としてコロナ禍以前からウイルス対策に効果の高い次亜塩素酸ナトリウムを使っています。本製品は耐薬品性に優れているので消毒液を使い分ける必要がなく、安心して消毒することができます。
全自動機能で褥瘡リスクを軽減する夢のようなマットレス
――貴院で「ここちあ利楽flow」を導入したきっかけを教えてください。
電源を差し込むだけで、かたさ調節も体位変換も全自動で行うエアマットレスです。
吉田:こちらもレンタル契約更新のタイミングでマットレスの見直しをしたことがきっかけです。デモで使ってみて、体圧分散性、利便性の高さは確認できていたので、ベッド上で過ごす時間が長い患者さんの褥瘡予防効果を期待して導入しました。以前のエアマットレスは構造や圧切替の動きが簡易的で、患者さんの体勢によっては、ハンモック現象により部分的に圧がかかり褥瘡リスクになっていたように思います。本製品は、患者さんの体重設定やゆったりとした体位変換、背上げや離床時の姿勢保持といったさまざまな機能をすべて自動で行ってくれるという夢のような優れモノです。ここまで技術が進化していることにとても驚きました。
――実際に臨床で使ってみて、日々の業務や患者さんへのケアに変化はありましたか。
吉田:サポート機能により体位が安定するので、患者さんの負担が軽減したと思います。例えば「バックサポート機能」。これは、ベッドの角度が約30度以上になると、背上げしたときの姿勢保持を自動的にサポートしてくれる機能です。ベッド上で食事をする患者さんもいるので、誤嚥防止のためにも姿勢が崩れないように工夫する必要があります。今まではクッションを支えにしていたのですが、ずれたり転がったりして、いつの間にか患者さんの姿勢が崩れていることもしばしばありました。本製品なら、背上げした瞬間にセンサーが反応して自動で体位を安定させてくれるので、患者さんは姿勢が崩れるストレスから解放されていると思います。
「自動しっかりモード」にも注目ですね。これは、起き上がったり、マットレス端部へ寝返ったり、端座位になったりという体動をセンサーが検知することで、製品全体が自動的に硬くなるという機能です。マットレスが安定すればベッドから車椅子へ安全に移乗できるので、介助する側も安心です。
――そもそもの導入目的であった褥瘡予防効果についてはどうでしたか。
鎌田:褥瘡予防の効果があったことは明らかで、本製品を使い始めてから褥瘡や潰瘍の発生状況がみるみる改善されています。もちろん、これまでも褥瘡が発生しないようにシワやずれ、背抜き、体位変換などには細心の注意を払ってきました。本製品導入後も、その頻度や回数は変えていません。
ただ、認知症の患者さんは他人に身体を触られることに対して抵抗を示す場合があります。そのため、十分な褥瘡予防ケアがやりにくくなることもあります。それでも今は、「自分たちにできないことがあっても、ここちあ利楽flowがバックアップしてくれる」という安心感があるので、看護師の精神的な負担は明らかに軽くなっています。また、新人とベテランの看護師では、どうしても経験の違いによりケアのレベルに差が生まれます。本製品はその差を埋め、褥瘡予防ケアの質を均一化してくれることも大きなメリットだと考えています。