3種のマットレス導入&管理の外部委託化で得たメリットとは?

2023.10.02

  • 床ずれケア
#製品活用事例
3種のマットレス導入&管理の外部委託化で得たメリットとは?

名古屋大学医学部附属病院(愛知県名古屋市)は、主に褥瘡予防対策の質を向上するため、3種類のマットレス「ストレッチグライドマットレス」「エバーフィットC3マットレス」「ここちあ利楽flow」(いずれもパラマウントベッド社)を導入。マットレスの管理をパラテクノ社に外部委託することも決めました。同院の副看護部長と認定看護師のお二人に、マットレス導入の経緯や反響、管理の外部委託化の効果などについて伺いました。

【お話を伺った方々】

太田幸代様(名古屋大学医学部附属病院 副看護部長)

小木曽雄大様(名古屋大学医学部附属病院 皮膚・排泄ケア認定看護師)

マットレス交換・運搬の手間から医療従事者を解放

――まずは、貴院の特徴や理念についてご紹介ください。

太田:当院は、35の診療科を擁する1080床(一般病床1030床、精神病床50床)の国立大学病院です。1871年、名古屋藩評定所跡に仮病院として設置されてから150年以上の歴史を持ち、地域の中核病院として医療の質と患者さんの健康を守り続けてきました。2019年には国際的な医療施設評価機関であるJCI(Joint Commission International)の認証を取得し、世界に通じる高い医療水準が認められています。こうした高度医療を担う一翼として、当院の看護部は「愛(やさ)しく、温かく、安全な看護の実践」という理念を掲げ、スタッフ一丸となって看護を実践しています。

名古屋大学医学部附属病院

――静止型マットレス「ストレッチグライド」「エバーフィットC3」を導入した狙いを教えてください。

太田:2021年から翌年にかけた年末年始のタイミングで、計3種類のマットレス(静止型マットレス2種類とエアマットレス1種類)を導入しました。従来使っていたマットレスはへたりが気になり始め、マットレスを丸洗いするための洗浄機は修理しながら使い続けること15年以上という状況だったので、清拭タイプのマットレスに一新することを決め、マットレスの種類と導入割合を慎重に検討しました。

重視したポイントは、機能性の高さによる褥瘡予防対策の質の向上、清拭消毒可能によるスタッフの業務負担軽減の2点でした。

――2種類の静止型マットレスをどう使い分けていますか。

小木曽:「ストレッチグライド」と「エバーフィットC3」を約7:3の割合で導入し、「ストレッチグライド」をベースマットレスとして使用しています。

前者は、術後や自立度が低い患者さんに使用しています。ウレタンフォームには、独自のカッティングが施されていて、体圧分散効果が期待できます。また、マットレス自体が伸びるストレッチシステムや滑りのよいグライドシート加工により身体のずれや圧迫感を軽減できる設計になっています。

後者は、動ける患者さんが多い病棟(小児科や精神科など)や、硬めのマットレスを希望する患者さんに使っています。リバーシブル構造になっており、体圧分散性に優れたソフトフィット面と、適度な反発性で身体を動かしやすいハードフィット面を選べることが大きな特徴です。

ストレッチグライドのストレッチシステム

ストレッチグライドのストレッチシステム
背上げとともに裏面のカット部が開き、マットレスが伸びることで、背上げ時の身体のずれや圧迫感を軽減します。

――実際に院内で使ってみて、患者さんやスタッフの皆さんの反応はいかがでしたか。

小木曽:患者さんからの反応は良好で、「靴を脱ぎ履きしやすい」「リハビリテーションがやりやすくなった」という声を聞いています。どちらのマットレスも両サイドに硬い素材を使用しているので、端座位や移乗のときに姿勢が安定します。

ストレッチグライド サイドエッジ

太田:スタッフからは「業務が楽になった」と言われています。第一の理由は、マットレスの交換作業が不要になったことです。以前は高機能なベースマットレスであるストレッチグライドの数と種類が限られていたので、術前、術後、回復期でマットレスを交換していました。ストレッチグライドが増えた今は、入院から退院まで高機能な静止型マットレスを使えるようになり、交換が不要になりました。

第二の理由は、拭くだけですぐ使えるようになったことです。以前は、使い終わったものを丸洗いするために、各階のエレベーターホールにあるマットレス用のカートまで運び出していました。約6~10㎏のものを運ぶのはかなりの重労働です。しかし、清拭消毒可能なマットレスとなったことで、ベッドサイドで素早く対応できるようになり、運搬に伴う時間や体力消耗をなくすことができました。

マットレスの安全管理を院内に周知徹底

――「ここちあ利楽flow」を導入した狙いを教えてください。

小木曽:褥瘡リスクが特に高い患者さんに対して、十分量の高機能なエアマットレスを導入したいという思いがありました。以前は保有数が少なく、在庫がない場合には空くまで待たなければならないことがあったからです。そのため、使い終わっても返却せず手元に保管しておく病棟もあり、悪循環となっていたため、早急に状況を改善する必要がありました。

実際、エアマットレスの数を2倍に増やしたことで、褥瘡リスクの高い患者さん全員にタイムリーに行き渡るようになりました。また、従来は機能が異なる3種類のエアマットレスが混在していたので、使い方に混乱するスタッフもいましたが、「ここちあ利楽flow」1種類だけにしたことで、スタッフが安心して扱えるようになったこともメリットだと考えています。

――導入するにあたり、スタッフの皆さんへの周知において特に留意したことは何ですか。

小木曽:導入から約2か月間、看護師長会やリンクナース対象の学習会などを通して、院内全体にマットレスの使い方を浸透させました。その際、最も重視したのは安全管理です。特に「ここちあ利楽flow」については、その機能を最大限に生かすためには習熟すべき点がいくつかありましたので、丁寧な説明を心がけました。

例えば、「スモールフロー機能」は、4つの彎曲形状のエアセル「スモールフローセル」が15分間に1つずつ、時計回りに膨張と収縮を繰り返すことで、自動的に小さな体位変換を行う機能です。とても便利ですが、耳鼻科の術後など絶対に身体を動かしてはならない患者さんにおいては禁忌となります。そこで、初期設定をOFFとし、禁忌に該当していないことを確認してONにするという運用とし、安全面に配慮しました。

また、急変時など心肺蘇生が必要となった場合は、ただちにエアマットレスを脱気してベッドを水平にする必要があります。そのためには、ポンプから緊急排出装置(カプリング)を取り外すのですが、以前の製品と位置が変わり、かつカプリングの数が1つから2つに増えたので、急変時の的確な対応ができるように説明する必要もありました。

マットレスの管理はプロに任せ、本来業務に全力投球

――マットレスの管理を外部委託した経緯や効果について教えてください。

太田:外部委託に踏み切ったのは、マットレスの使用状況等をきちんと把握するためです。そうすることで、常にメンテナンスされた安全なマットレスを提供できる体制、患者さんの褥瘡リスクに応じたマットレスをスムーズに使用できる体制を整えました。

外部委託といっても、委託先であるパラテクノ社(パラマウントベッドホールディングス)のスタッフが、土曜、祝日を除く8時30分~17時の間、院内に常駐するかたちです。作業を依頼するとすぐに対応してもらえるので、医療従事者は安心して本来業務に打ち込めるようになりました。依頼内容は、マットレス(関連備品を含む)の準備や交換、病棟への運搬、病棟からの撤去、清拭消毒などです。感染症や汚染が気になる場合は入念に清拭消毒してもらい、エアマットレスが必要になった場合は膨らませた状態で病棟へ届けてもらっています。

ベッドセンター内にある物品管理倉庫
ベッドセンター内にある物品管理倉庫
返却されたマットレスを清拭消毒する様子
返却されたマットレスを清拭消毒する様子
依頼のあったマットレスを病棟に運搬する様子
依頼のあったマットレスを病棟に運搬する様子

太田:清拭タイプマットレスの初回導入にあたっては、看護助手に清拭消毒の方法を実演にて説明してもらい、マットレスの運用に関連する資料も協働して作成しました。外部委託することで医療従事者とは異なる目線が入り、より多角的に患者さんのニーズをすくい上げることができるようになったと思います。これからも、患者さんを支える関係者の方々と協働して、よりいっそう「愛しく、温かく、安全な看護」を提供していきます。

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