スキン-テア予防策の1つとして ――「まもりたい」の運用事例

福岡大学筑紫病院 皮膚・排泄ケア認定看護師 園田 みずき 様にスキン-テア対策の一環として利用されているパラマウントベッド商品「まもりたい」の導入されたきっかけや、活用事例を伺いました。

「あたたかい医療」の実践

福岡大学筑紫病院は、昭和60年に急性期病院として開院し、さらなる医療の充実と発展を目指し、平成25年5月7日に新病院を開院しました。大学病院としての高度かつ先進的な医療と、地域医療支援病院としての地域に密着した急性期医療という2つの使命をもち、安全で安心な質の高い医療と情報を提供し、「あたたかい医療」を目指しています。看護部の理念である『人間性豊かな患者中心の看護~誠実・責任・創造~』を実践し、看護の力で選ばれる病院を目指しています。

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福岡大学筑紫病院 外観

きっかけは軽失禁用紙パンツ

摩擦やずれによって、皮膚が裂けたり、剥がれたりする皮膚損傷スキン-テア(以後、テアとする。)は、主に高齢者の四肢に発生します。高齢患者の増加とともに当院でもその対策を様々な方法で実施していました。その中で考案したのが、院内採用の医療材料(チューブ包帯とギブスを巻く際の緩衝材)を組み合わせて手作りした手足用カバー「手足守るったい」でした。

テアは、平成30年度の診療報酬改定において、入院時に行う褥瘡に関する危険因子の評価に加わるなど、ここ数年注目されるようになり、より使用頻度は増加しました。それに伴い、使用する医療材料費とスタッフの作業時間が問題となっていました。

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以前使用していた手作りの手足用のカバー「手足守るったい」

 

より良いケアをより安く提供するために代替品を検討していたある日、軽失禁用紙パンツに出会いました。その素材は伸縮性もあり肌触りも抜群だったので、これを使えば、外力からの保護、蒸れ軽減、適度な保持力を実現できる理想的な手足用カバーができるのではとひらめきました。

そこで、紙パンツの販売元であるスペアポケット社に相談したところ、直ぐにサンプルを製作してくださいました。早速院内でサンプルを使用して、評価を実施したところ、「蒸れにくい」「フィットしやすい」「着けやすい」など良好な評価を得ることができ、更にコストダウンにもつながったため院内での導入が決定しました。ネーミングは、「手足守るったい」という博多弁から、親しみやすく誰でもわかりるよう「まもりたい」としました。

「まもりたい」には、患者さんの皮膚を「守りたい」という思い、帯状でしっかり保護できる「まもり帯」、チームで取り組むための「守り隊」という意味が込められています。

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「まもりたい」

 

 

院内に浸透させるための仕掛け作り

「まもりたい」の院内への導入を推し進める一方で、褥瘡対策委員会と協働しスキン-テアマニュアルを作成し、褥瘡対策マニュアルに追加しました。

このマニュアルは、日本創傷・オストミー・失禁管理学会が発行した「ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理」を参考に、当院独自の項目も加えて作成しました。その中には、一目でわかりやすく簡便に活用できる、下表のようなリスクアセスメント表があります。

A:全身状態の観察 に一つでも該当する項目があった場合には、テアのリスクありと判断し、患者さんの状態に合わせて以下の予防策1~5を実施します。

B:皮膚状態の観察 に一つでも該当する項目があった場合には、「まもりたい」を使用し、外力からの保護を実施します。

 

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正しく効果的に使ってもらえるよう、使用方法、使用上の注意点をラミネートして簡易マニュアルを作成し、各部署の保管ラックに配置しました。

また、当院では褥瘡評価と同様に「入院時、定期評価日(水曜)、ADL変化時」とタイミングを決めて、評価を実施するようにしています。

 院内への浸透をより加速させるため、教育面、運用面でも対策を講じました。教育面では、導入前に、全職員対象となる医療安全管理部や褥瘡対策委員会主催の研修会を活用し、テア予防の必要性や「まもりたい」の対象者や使用方法について周知しました。

また、看護師長会などの管理職が集まる場でも導入について説明を行い、院内全体で取り組む機運を高めました。運用面では、使いたいときに使えない、注文や管理が手間となって使われないなど、事前に予想された問題点を解決できるように、他の医療材料同様に、院内のSPDシステム※1に登録し、常に一定数が病棟に保管されているようにしました。

 ※1  SPD:      supply(供給)、processing(加工)、distribution(分配)の頭文字をとった略語です。医療現場の要望により、医療材料等を各部署に決まった数だけ供給することで、在庫不足・過剰在庫を解消し、請求・発注業務を軽減し、保険請求漏れを防止することを目的としたシステムです。

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SPDカート内の「まもりたい」

 

スキン‐テア対策「まもりたい」導入後の評価

「まもりたい」を導入してから4ヶ月後、「皮膚障害の有無」「装着後の安定性」「着圧の程度」「装着の簡便性」という4つの視点で院内スタッフ約80名を対象にアンケート調査を実施したところ、以下のような結果となりました。

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皮膚障害の有無:4件の圧痕は発生したものの、皮膚損傷は発生しませんでした。

装着の簡便性:回答したすべてのスタッフが「非常に簡単」または「簡単」と回答し、否定的な回答は一切ありませんでした。

 

このような評価結果が得られたにもかかわらず、院内全体のテア発生数は、あまり変化していません。

この要因は「スタッフの意識の向上」にあると考えています。「まもりたい」を導入する前は、テアに対する意識が不足していたため、発生しても、それがテアだと認識できず、報告(インシデントレポート)として上がってこないことも多々ありました。しかし、「まもりたい」の導入により、テアに関するスタッフの意識が向上し、報告数も増え、実際には発生数が減少していても、データ上は変化していないように見えます。さらに教育を進め、発生数を減少させることが今後の課題です。

 

 

スキン‐テア対策「まもりたい」手足に装着する以外の使用方

「まもりたい」は1枚が80cmの筒状カバーです。患者さんの手足の長さに合わせて、切って使うことができますが、切って余った部分も有効活用できるように、当院では以下のように活用しています。

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車いすのフィットレストに装着

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 心電図モニターの送信機に装着

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マンシェットの下に装着

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ネームバンドやリムホルダーの下に装着

下肢のテアに関するインシデントレポートを紐解くと、ベッドから車いすへ移乗する場面などで、車椅子のフットレストにぶつけたことによる発生の割合は高く、『「まもりたい」を下肢に装着しておけばよかった。』『「まもりたい」をフットレストに装着しておけばよかった。』というコメントも多数見られます。

 ※車椅子のフットレストにぶつけてのテア発生については、消費者庁からも注意喚起情報が出ております。

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スキン‐テア対策「まもりたい」が奏功した事例

 「まもりたい」の活用により、テアの予防につながった事例を以下に紹介します。90歳台、女性、自宅から入院した時点で全身に数ヵ所のテアが発生していました。四肢に「まもりたい」を装着し、毎日の保湿を実施、ケア時にはつかまず下から支えることに注意したところ、入院中の発生はなく、入院時に発生していたテアも2週間で治癒しました。

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 入院時テア発生

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 2週間後 治癒

 

事例ではありませんが、当院医療スタッフ、患者さんやご家族からの感想をまとめました。

 

 スタッフの感想① 看護師

肌触りが良く、伸縮性に富んでいて、装着しやすいのが良かったです。また、体位変換時に四肢に手が触れてのスキン-テアの発生が多く、細心の注意を払いながら体位変換をしていましたが、「まもりたい」導入後は、安心して患者さんの身体に触れることができるようになりました。

 スタッフの感想② 理学療法士

ベッドから車椅子への移乗時、車椅子からの立ち上がり時に、スキン-テアが多く発生していたので、リスクが高い患者様に対しては、移乗のときに「まもりたい」を装着するようになりました。

 スタッフの感想③ 医師

「まもりたい」の幅広タイプ(幅25cm)は、医療用テープを使わずに、腹部のガーゼやストーマ装具を固定できるので、非常に役立っています。特に認知症の患者様においては、ガーゼやストーマ装具が目に入ると、どうしても触りたくなってしまいますが、「まもりたい」で隠れることで自傷行為が減少しました。

 

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 「まもりたい」でストーマ装具とガーゼ固定

患者さん、ご家族の感想

肌触りがよくて気持ちがいいね。ちょっとぶつけたらすぐに黒くなっていたけどこれはありがたい。家でも使いたい。

自分の大事な家族の皮膚をきちんとケアしてもらえていることが目で見て分かります。皮膚以外のケアも丁寧にしてくださるように感じ、病院、スタッフの皆様に対する信頼感がさらに高まりました。

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