患者さんから「文句が出ない」体圧分散マットレス

2020.10.30

  • 床ずれケア
#製品活用事例 #オピニオンリーダーインタビュー
患者さんから「文句が出ない」体圧分散マットレス

適切な褥瘡管理を考える上で、体圧分散マットレスは重要な要素の一つです。医療現場では実際、患者さんに適した製品をどのように選択し、管理・運用しているのでしょうか。地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都板橋区)は、2017年にパラマウントベッド社の標準マットレス「エバーリーフシャイン」とエアマットレス「ここちあ結起(ゆうき)」を導入しました。これに関連して、同センターで皮膚・排泄ケア認定看護師として活躍する野島陽子さんと髙木美那さんに、現場での取り組みをうかがいました。

健康長寿様記事-お二方

院内の「展示会」で徹底的な比較検討

――貴院の特徴と、新しいマットレスの導入に至った経緯を教えてください。

 野島:東京都健康長寿医療センターは、高齢者専門の医療機関として地域のニーズに応じた高度急性期医療を提供しています。地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所と一体的に活動することで、臨床と研究が密接に連携している点が大きな特徴です。高齢者ならではの特性に応じた治療やケアにより、患者さんのQOLを維持・向上させることを目指しています。

髙木:当院は28の診療科と550床(一般520床、精神30床)の病床を擁し、手厚い7:1看護で患者さんのケアに当たっています。平均在院日数は12.4日(2019年度)で、入院患者さんの平均年齢は79.9歳です。70歳以上の方が8割以上を占めており、1割程度が90歳以上であることからも、他院と比べても群を抜いて高齢者が多い医療機関です。

 野島:当院のマットレス(エアマットレスと体圧分散性の高いマットレスを標準マットレスとして使用)は(過去に購入したマットレスを除く)リース購入の為、5年毎に更新・契約しています。今まで使用していたエアマットレスは、操作が簡便な高機能性で大変使用しやすかったのですが、型が古く、在宅でのレンタルが殆どされなくなりました。2017年に、再度、マットレスの更新・契約の年となったため、院内のマットレスを刷新することになりました。

 ベッド上で過ごす時間が長い高齢者の褥瘡を予防するためには、退院後も自宅や施設で良質なマットレスを使うことが大切です。しかし、どれだけ良い製品であっても、使い方が不適切では意味がなく、却って褥瘡を発生させることすらあります。特に、使い方にコツが必要なエアマットレスは、ご家族や訪問看護師へしっかりと指導・情報共有するためにも、病院と同じ製品を使用してもらうのがベストだと考えています。そのことも視野に入れて、在宅でも使いやすく、効果が期待できるマットレスを探すことになりました。

――その条件に適したマットレスの選定は、どのように行ったのですか。

 野島:当院には褥瘡リスクの高い患者さんが多いので、体圧分散性が優れていることは絶対条件でした。標準マットレスとしては、様々なニーズや場面に対応できるリバーシブルタイプを希望。エアマットレスは、背上げ時のずれが少なく、体圧分散性がより優れているものを探しました。それぞれ4種類ずつを候補としてピックアップしてから、院内で大々的な「展示会」を開催(2日間)。数百人の看護師がすべての製品を体験できるようにしました。

 髙木:マットレスを選定するときに、実際に体験してみることはとても重要です。横になってみたり、端に座ったり、背上げしてみたりと、様々な角度から検討を重ねました。そして、多くの看護師から高い評価を得たのがパラマウントベッド社の製品だったのです。不快な浮遊感や沈み込む感じがなく、「しっくりくる」という声が多かったです。また、リバーシブルタイプのマットレスについては、ソフトフィット面とハードフィット面のメリハリがしっかりしている点が好評でした。

 野島:リバーシブルタイプの「エバーリーフシャイン」を450枚、エアマットレスの「ここちあ結起」を100枚ほど導入することになりました。当院では「褥瘡ハイリスク患者ケア加算」の算定対象となる患者さんが常に100人前後入院されています。その数をもとにエアマットレスの導入数を決定し、残りの病床では「エバーリーフシャイン」を使用するイメージでした。これだけ良質なマットレスを全床に取り入れた背景には、「環境面でも褥瘡対策に力を入れたい」という強い思いがあります。同加算で得られた収入はすべてマットレスの購入・管理に充て、患者さんに還元しています。

「文句が出ない」はマットレスへの賛辞

――「エバーリーフシャイン」と「ここちあ結起」は、病棟でどのように活用されていますか。

 野島:「エバーリーフシャイン」については、褥瘡予防の観点から、基本的にソフトフィット面を使用しています。適度なフィット感で寝心地が良い一方、サイドエッジがしっかりしているので、移乗などの際に端座位になっても安定感があるのがうれしいですね。ハードフィット面を使用するのは、主に病床上でリハビリテーションをするときです。医師や理学療法士から「もう少しかたいほうが動きやすい」と指摘されることもあり、そうした場合に使用しています。また、寝返りを打つことが難しい患者さんの場合は、体動を考慮して睡眠時にもハードフィット面を使用することがあります。今後、こうした場面ごとのフローについては、皮膚・排泄ケア認定看護師が中心となってまとめていきたいと考えています。

 髙木:私が担当する病棟では「ここちあ結起」を2枚導入していて、終末期の患者さんと、拘縮の強い患者さんが使っています。いずれもかなり褥瘡リスクが高い患者さんですが、以前の製品と比べてギャッチアップ時の窮屈感がかなり緩和され、背抜きのときに手を入れやくなりました。専用ケーブルでベッドとリンクさせると、ベッドの背上げ角度に合わせて、マットレスのかたさを調整してくれるのが印象的です。

ここちあ結起であることを示すシール

――患者さんや他の医療従事者の皆さんからは、マットレスについてどのような声が聞かれるでしょうか。

 髙木:以前は「もっとやわらかいマットレスに替えてほしい」や逆に「もう少し硬いマットレスがいい」といった患者さんの声を聞くことがありましたが、パラマウントベッド社のマットレスを導入して以降、ギャッチアップ時の身体の痛みや、寝心地の悪さに関する訴えが大幅に減っています。

 野島:基本的に患者さんは、不満を感じなければ、特にマットレスの存在を意識することはありません。「文句が出ない」というのは、マットレスにとって非常に高い評価ともいえるのです。

 野島:「展示会」に参加した看護師はもちろん、他の医療従事者からもおおむね好評です。退院支援で関わる訪問看護師の皆さんからも、「いいマットレスですね!」と驚かれることが少なくありません。また、扱いやすさという面でも良質な製品だと思います。新型コロナウイルスの影響が広がる昨今、院内ではいつも以上に感染予防の高い意識が求められています。当院が導入したパラマウントベッド社のマットレスは、いずれも消毒液に対する耐性に優れたカバーが用いられています。ウイルス対策に効果の高いアルコールや次亜塩素酸ナトリウムで、サッと清拭してすぐ使えるため、業務負担の軽減という意味でも役立っています。

退院された患者さんのマットレスを清拭消毒する看護助手

――マットレスの管理や運用について、心がけている点はありますか。

 野島:当院では、リース契約しているマットレスにおいては、故障や不具合が生じた際には、使用している病棟が直接パラマウントベッドに連絡をし、サポートを受けるという前提があるため、ME室や皮膚・排泄ケア認定看護師は管理を行っていません。各病棟の師長が責任者となり、備品の一つとして扱ってもらっています。毎日16時の時点で2種類のマットレスの個数を確認し、一覧表に記入。どの病棟に何枚あるか一目で分かるようにしてあるため、急遽マットレスが必要になった場合も、病棟間での貸し借りをスムーズに行っています。

 髙木:マットレスの管理や運用面では、看護助手の存在も大きいですね。エアマットレスを膨らませて準備することは、ベッドメイキングの一環として看護助手の業務にも含まれています。また、個数の把握や病棟間の貸し借りなどを担当してもらうことも少なくありません。パラマウントベッド社の担当者に看護師向けのマットレス勉強会を開いてもらったことが何度かありますが、そのときは看護助手にも積極的に参加してもらいました。

マットレスの貸し出し状況を「見える化」する『マットレス管理表』

 ――褥瘡・栄養サポート委員会の取り組みや地域連携について、貴院での実践を教えてください。

 髙木:当院にとって褥瘡は重要なテーマの一つですから、コツコツと時間をかけながら知識の普及に努めています。その年ごとに新しいトピックスを取り入れながら、同じテーマでも視点を変えて講義や演習を実施しており、前年度と同じ内容で済ませたことはありません。最近、特に力を入れているのは「褥瘡とスキン-テア※の見極め」。「なぜこの部位に、この形状で、この深さの傷ができたのか?」を考える力を養っています。(※脆弱な皮膚に摩擦やずれなどの一時的な外力が加わることで生じる創傷)

野島:地域連携については、2015年に「たんぽぽ会」を立ち上げて、地域の訪問看護ステーションとの連携を深めています。これは、当院の専門看護師および認定看護師と、東京4区(北区、豊島区、練馬区、板橋区)の訪問看護師が年に数回集まり、勉強会と交流会を行うもの。「顔が見える関係」を築くことで、退院後の患者さんについて連絡や相談をいただく機会も増えてきたように思います。

 こうしたときも、同じマットレスを使っていることで対応がしやすくなりました。例えば、「退院後に褥瘡が悪化してしまいました」といった内容であれば、「体重が減少していませんか? その場合は、○○の方法でエアマットレスを調整してみてください」というように、同じ製品を使っているからこその具体的なアドバイスができます。

 高齢者の褥瘡を予防するためには、関係する医療従事者が積極的に連携を図ること、そして的確なマットレスの選定と活用が欠かせないのです。

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