新生児の黄疸に遭遇したら ~生理的黄疸と病的黄疸の見分けかたから治療まで~

新生児の黄疸に遭遇したら ~生理的黄疸と病的黄疸の見分けかたから治療まで~

新生児黄疸(生理的黄疸)について

新生児黄疸(生理的黄疸)とは、生後間もない新生児の大半にみられる黄疸です。黄疸になると、皮膚や白目の色が次第に黄色味を帯びてきますが、新生児でみられる黄疸のほとんどは、生理的におきる新生児黄疸です。この新生児黄疸は、およそ生後3~5日目をピークに自然と治まっていくものなので、過度に心配する必要は必要ありません。

一方、ごく稀に重度の黄疸が起きたり、生後5日以降も黄疸が長引いたりする場合があり、これらのケースでは病的黄疸の可能性があるため、詳細な検査や治療が必要です。

新生児に黄疸が起きた場合、これまでに出産・育児の経験のない親の場合は、生れて間もないわが子に起こる黄疸に驚くことがあります。また、黄疸が生理的なものなのか病的なものなのかを両親が見分けることはできないため、産後の母子をサポートする医療者が適切に判断する必要があります。

今回は、赤ちゃんに黄疸が起きる仕組みについてお伝えします。また、病的黄疸であった場合の治療法などについてもみていきましょう。 

新生児黄疸が起きるしくみ

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ほとんど全ての赤ちゃんに起きる新生児黄疸。黄疸とは、血液中に含まれるビリルビンという成分が身体の組織に沈着し、肌や白目が黄色く染まって見える状態のことです。このビリルビンは、赤血球が壊れることで血液中に増えていきます。生まれたばかりの赤ちゃんは、出生と同時に口呼吸を始め、これによって循環器や呼吸器のしくみが口呼吸に適したしくみへと大きく変化します。このとき身体中に酸素を運ぶ役割を担う赤血球でも、新しい赤血球への入れ替えが起きます。つまり、胎児の時に使用していた古い赤血球が壊され、このことにより一時的にビリルビンが増加するのです。大人では通常、過剰なビリルビンを、便として排泄しているのですが、生れて間もない赤ちゃんは、消化器系も未熟なため、ビリルビンの排泄が追い付かず、黄疸になりやすいのです。

この生理的黄疸が起きると、生後2~3日後から目で見てなんとなく肌が黄色がかって見え始め、生後5日までにピークに達します。わが子に起きる変化に驚いてしまう人もいますが、この時期に起きる黄疸のほとんどは生理的黄疸で、赤ちゃんにとって害になることはありません。 

生理的黄疸と病的黄疸の判断基準

生理的黄疸と病的黄疸を見分ける場合は、まず大きな2つのポイントに注目して判断します。

1つ目は、黄疸が出始めるタイミング。2つ目は、血中ビリルビン濃度でみた黄疸の程度です。 

1.通常とは異なるタイミングで黄疸が出たら要注意

生理的黄疸の場合は生後2~3日後から出はじめるのに対して、一部の病的黄疸では黄疸が出始める時期が異なります。 

生理的黄疸

生後2~3日後から出現。

早発黄疸

生後24時間以内に出現。血液型不適合を原因とする溶血性黄疸の疑い。

遷延性黄疸

生後2週間以降に出現。胆管閉塞症や肝炎などの消化管の病気の疑い。

早発黄疸や遷延性黄疸がみられた場合は、病的黄疸が疑われるため、精密検査や治療を受ける必要があります。

2.病的黄疸では血中ビリルビンがより高値に

病的黄疸では、血中のビリルビン値が生理的黄疸よりも高値になります。

生理的黄疸

血中のビリルビン値が、黄疸のピーク時(生後4、5日)に成熟児で12mg/dl、未熟児で15mg/dl以下であり、かつ1日のビリルビン値の上昇が5mg/dl以下である。

病的黄疸

血中のビリルビン値が、成熟児で12mg/dl、未熟児で15mg/dlを超える。または、1日のビリルビン値の上昇が5mg/dlを超える。

黄疸の判定方法

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黄疸の判定方法は、基本的には医師が視診で行い、必要に応じて血液検査を行います。

まずは視診について解説します。黄疸は顔から始まり、進行とともに胸、おなか、ふともも、脚先へと黄染が進んでいきます。足裏まで黄色くなっていれば、血中ビリルビン値が10mg/dlを超えている可能性があるので、追加の検査が必要です。

黄疸の程度を簡易的に調べたい場合は、黄疸計を赤ちゃんの皮膚にかざすだけでおおよそのビリルビン濃度をチェックすることも可能です。

高ビリルビンが疑われるケースでは、血液を採って血中のビリルビン値(脂溶性の間接型ビリルビン値・水溶性の直接型ビリルビン値)を詳しく調べます。

血中のビリルビンの濃度が高い場合や、ビリルビン濃度上昇のスピードが速く、生理的範囲を超えている場合は、治療が必要です。

病的黄疸に対する2つの治療法

病的黄疸に対しては、適切な治療を行う必要があります。その理由は、過剰なビリルビンには毒性があり、無治療で放置すると「核黄疸」という病気に移行する危険性があるからです。核黄疸は、脂溶性の間接型ビリルビンが脳細胞に沈着し、神経の麻痺などの後遺症を引き起こす怖い病気です。

したがって、病的黄疸治療によって血中の過剰なビリルビンを除去し、核黄疸の発生を防ぐことが大切なのです。 

現在、病的黄疸に対しては「光療法」と「交換輸血療法」の2つの方法を用いて治療しています。どちらの治療法を用いるかは、黄疸の進行度やその他の精密検査の結果を基準に判断します(表1)。

表1.jpg表1.血清総ビリルビン濃度による光療法、交換輸血の適応基準 (単位 mg/dl)(光線:光療法、交輸:交換輸血療法) 出典= 神戸大学医学部小児科編,未熟児新生児の管理, 2000: 205-224

1. 光療法について

光療法は、新生児に特殊な光線を当てて治療する方法です。光源は450~470nm付近の波長の青色LEDで、その光の作用で毒性の高い間接型ビリルビンを光異性体に変え、体外への排出を促します。早ければ治療開始後2~3日で血中ビリルビン値は正常値に戻り、治療が完了します。発疹などの副作用が現れることがありますが、現在ではLEDの改良が進み、出現率は低くなっています。

2. 交換輸血療法について

交換輸血療法は、血液型不適合による溶血性疾患を伴う黄疸や、後遺症が残る可能性のある重症例に対して行われる根治療法です。瀉血と同時に輸血を行い、約1~2時間かけて全血を正常な輸血に交換します。以前は感染症や血管系の副作用が起きることがありましたが、現在では安全な手技が確立されているため、副作用の出現は稀です。 

黄疸になりやすく注意が必要な赤ちゃん

早産児や低出生体重児では、身体の水分量も少なく、ビリルビンの排泄能力も未熟なため、重度の黄疸になやすいと言われています。また、母子間のRh式血液不適合またはABO式血液不適合によって黄疸が起きやすくなります。このケースでは、母体の血液型と赤ちゃんの血液型の性質が異なるため、抗原抗体反応によって血液の溶解が起きます。生理的黄疸に比べて赤血球の溶解が速いため、生後すぐに黄疸がみられ、重症になりやすいと考えられています。黄疸になりやすいその他の原因としては、尿路感染症などによるビリルビンの上昇が報告されています。

また、病的なものではありませんが、完全母乳で育てた赤ちゃんでは、黄疸が長引くことがあります。これは母乳性黄疸とよばれ、赤ちゃんにとっては害がないことが分かっています。多くのケースでは心配ありませんが、胆管閉塞症など他の病気が隠れていないか、鑑別しておくことが重要です。 

ほとんどの新生児黄疸は生理的なもので心配不要

生れたばかりの赤ちゃんに起きる黄疸の多くが新生児黄疸(生理的黄疸)で、治療が不要な場合がほとんどです。ただし産後24時間以内に黄疸が出た場合や、黄疸が治まらないとき、足の裏まで黄疸が広がっているときは、治療が必要な場合があります。異常を感じたら自己判断せず医療機関を受診し、医師の指導を受けましょう。 

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