ブルンストローム・ステージ(Brs)とは?

脳血管障害になられた患者や利用者は運動麻痺の症状をきたしている方が多くいます。そして、脳血管障害の運動麻痺で現れる動き方は特有です。実は、脳血管障害の運動麻痺は発症直後から時間を追うにつれて一定の変化のパターンがあります。

脳血管障害患者の運動麻痺に一定のパターンがあることを解明し、分類した評価基準に「ブルンストローム・ステージ(Brunnstrom Stage; Brs)」と呼ばれるものがあります。ブルンストローム・ステージは脳血管障害の状態を運動パターンから推測し、機能的予後を見極めるうえで重要な指標となりました。 

ブルンストローム・ステージの開発と日本での普及

ブルンストローム・ステージは1960年代にアメリカニューヨーク州にあるリハビリ病院で勤務していたSigne Brunnstrom(シグネ・ブルンストローム)女史が、脳血管障害患者への機能回復訓練に取り組んでいるなかで開発し提唱しました。 

脳血管障害患者の回復過程のパターンの発見

当時、脳血管障害の患者の回復過程で起きる現象は複雑で理解しがたいものでした。そのなかで女史は数多くの症例と接し、観察を重ねたのです。その結果、脳血管障害の患者が運動麻痺から回復する過程で一定の運動パターンがあることを発見しました。 

日本で脳血管障害の運動麻痺評価法として普及

その後、アメリカで女史から直接指導を受けた医師たちによってブルンストローム・ステージが日本に持ち込まれました。そして理学療法士(PT)、作業療法士(OT)の養成校では必修の課題として取り入れられます。その結果、現代の日本では脳血管障害患者に対する運動麻痺評価法として広く普及していったのです。

脳卒中患者がたどる6つの運動機能ステージ

ブルンストローム・ステージでは脳血管障害を発症した方が運動麻痺から回復する過程を6つのステージに分類しました。その経過は全く動きが生じないレベルから始まり、徐々に関節ごとに運動ができるレベルに達していきます。

ステージⅠ:随意運動なし(弛緩)

脳血管障害が発症し運動麻痺が生じると、筋肉は全く機能しなくなります。意図的に筋肉を収縮させようとしても全く反応しなくなるのです。

ステージⅡ:連合反応

弛緩状態を過ぎると、意図的もしくは反射的な筋収縮が出現し始めます。これを連合反応と呼び、後述の共同運動につながる粗雑で瞬間的な運動です。健常側の四肢に強い筋収縮を促すことで、反応が現れることがあります。またあくびやくしゃみ、そして咳などで連合反応が誘発されることもあります。

ステージⅢ:共同運動

連合反応の段階に比べてより随意的で大きな運動が可能になってきます。しかし運動パターンは一定で、実用性はあまりありません。例えば、肘を屈曲しようとしても肩や手首が同時に屈曲してしまうのです。またこの時、筋肉の痙性が最も高くなるとされています。

※痙性とは筋肉が痙縮と呼ばれる筋緊張異常になること。深部腱反射が亢進し、急激な伸長刺激に対して筋収縮を起こす。

ステージⅣ:分離した運動が出現する(基本的共同運動から逸脱した運動)

さらに症状が回復すると、それまで共同運動でしか動かせなかったものが、少しずつ関節ごとに独立した動きができるようになってきます。そのため随所で機能的な動きが可能になってADLの自立度も高まります。

ステージⅤ:分離運動の範囲拡大(基本的共同運動から独立した運動)

さらに経過が良好であれば共同運動がほとんど出現しなくなります。動作の実用性も高まるため簡単な装具類だけで自立した生活が可能になります。また共同運動期に見られた痙性も縮小していきます。

ステージⅥ:意図的に分離運動を行う(協調運動ほぼ正常)

運動麻痺の症状から回復できれば、正常に近い運動レベルまで達することができます。ただし巧緻性(器用さ)やスピードといった点で正常に劣ることがあり、患者の病前に行っていたレベルに達しえないことがあります。

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上肢・下肢・手指の評価ステージ

ブルンストローム・ステージの実際の評価は、上肢・下肢、そして手指の3つに分類して行われます。

上肢の評価ステージ

ステージⅠ:弛緩性麻痺

反射的、随意的いずれも運動・筋収縮は見られない。

ステージⅡ:痙性発現期

随意的な筋収縮と連合反応が認められる。痙性もわずかにみられ、共同運動の兆候が見られることがある。

ステージⅢ:痙性期

屈曲共同運動・伸展共同運動といった共同運動パターンで随意的に動くことができる。この時、筋肉の痙性が最も高くなる。

ステージⅣ:痙性減弱期

筋肉の痙性が軽減し、共同運動パターンから外れた運動が可能になってくる。例えば、以下の運動が可能になることが多い。

  • 手を腰の後ろに回す
  • 肘を伸ばしながら腕を前方へ水平に挙げる
  • 肘を90度に曲げた状態で肩をねじる(回内・回外)

ステージⅤ:痙性減少期

共同運動パターンから分離した運動が可能になり、以下の運動が可能になってくる。

  • 腕を側方水平に上げる
  • 腕を頭の上まで上げる
  • 肘を伸ばしたまま腕を水平に上げ、かつ腕をねじる(回内・回外)

ステージⅥ:痙性最小期

関節ごとの運動が随意的に可能になる。正常とほぼ変わらない動作ができる。

下肢の評価ステージ

ステージⅠ:弛緩性麻痺

随意的な運動や反射的な筋収縮も認められない。

ステージⅡ:痙性発現期

連合反応が見られ、随意的な運動もわずかに可能になる。

ステージⅢ:痙性期

共同運動が強く現れる。下肢においても屈曲共同運動と伸展共同運動がある。

ステージⅣ:痙性減弱期

筋肉の痙性は減弱し、共同運動パターンから外れた運動が可能になってくる。例えば、以下のような運動が可能になる。

  • 坐位で膝を伸展する
  • 坐位で膝を曲げ、足底を床の後に向かって滑らせる
  • 坐位で踵を床から離れずにつま先を挙げる

ステージⅤ:痙性減少期

痙性はさらに減弱し、関節ごとの運動のできる範囲が拡大する。例えば、以下の運動が可能になってくる。

  • 立位で股関節を伸展させながら膝を屈曲できる
  • 立位で下肢を前方に出しつつ、踵を床につけた状態でつま先を挙げる
  • 坐位で股関節を内旋する

ステージⅥ:痙性最小期

関節ごとに分離した協調的な運動ができるようになる。例えば、以下の運動が可能となる。

  • 立位で骨盤を引き上げずに下肢(股関節)を外転する
  • 坐位で膝の動きだけでつま先を左右に振ることができる

手指の評価ステージ

ステージⅠ:弛緩性麻痺

手指の筋肉は弛緩して全く動かない状態。 

ステージⅡ:随意性の出現

わずかに手指を随意的に曲げることができる。

ステージⅢ:屈曲傾向の発現

随意的に全指の同時屈曲や鉤型握りが可能になる。一方で伸展方向は随意的に動かすことができない。

ステージⅣ:伸展運動の発現

集団での伸展運動が部分的にできるようになる。横つまみが可能になる。

ステージⅤ:巧緻性の出現

集団伸展ができるようになる。対向つまみ、筒握り、そして棒握りが可能になる。ただし動きは不器用で一定していない。

ステージⅥ:巧緻性の向上

全ての握り動作ができるようになり、伸展運動も全可動域で可能になる。指を個別に動かすことができるが、健常に比べて巧緻性は劣る。

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ブルンストローム・ステージは業界での共通認識として有用

近年はさまざまな研究が積み重ねられた結果、ブルンストローム・ステージ以外にも多くの評価基準が開発されています。

しかし、ブルンストローム・ステージは比較的簡便で理解しやすい評価基準であり、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が養成校で十分に教育されている指標です。そのため日本では施設を跨ぐ申し送り時や、リハビリ専門職以外が患者や利用者の現状把握する手段として現在でも有用な評価基準と言えるでしょう。

 

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