
母子ケア
子宮頸がん検診で女性のいのちを救う~子宮頸がん検診クーポン券の活用~
20代後半~40代の若い世代を中心に、罹患のピークを迎える「子宮頸がん」。日本では、年間約34,000人もの女性が子宮頸がんと診断され、そのうち約2,900人が命を落としています。子宮頸がんは、患者本人が気づかないうちに進行するのが特徴ですが、定期的に検診を受け、早期発見・早期治療を行えば予後が悪くないがんのひとつとされています。
しかし日本では、実際に子宮頸がん検診を定期的に受けている人は、全体の約2割程度にとどまっており、受診率は先進諸国22カ国中でもっとも低いのです。検診を受けない理由としてもっとも多いのは、「時間がない」というもの。仕事やプライベートで忙しいため、受診のハードルがやや高く感じられているようです。
厚生労働省は、女性が子宮頸がんに対する正しい知識を持ち、がん検診を受診する習慣が定着するよう、20歳を迎えた女性を対象に検診無料クーポン券を配布しています。また、それ以外の年齢の女性も子宮頸がん検診が受けられるように、市町村による子宮頸がん検診の事業を推進しています。ほとんどの市町村では、市町村の定める対象者へ、がん検診の費用の全額あるいは一部を補助するクーポン券を配布しており、少ない自己負担でがん検診を受けることが出来ます。子宮頸がん検診クーポン券の使い方や、検査の内容などについて解説します。
子宮頸がんとは
子宮にできるがんには、子宮頸部の入り口部分に多く発生する「子宮頸がん」と、子宮内膜に多く発生する「子宮体がん」の2種類があります。子宮頸がんと子宮体がんは、発生部位の違いだけでなく、発生原因、がんになりやすい年齢層、治療法などがまったく異なる病気です。
子宮がんのなかでも、子宮体がんは、50代~60代の比較的高年齢の女性に多いがんであるのに対し、子宮頸がんは、20代後半~40代の若い世代がかかりやすいがんです。
また、子宮体がんはホルモンの影響が原因で発生するのに対し、子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスへの感染がきっかけで発生します。HPVはごくありふれたウイルスで、性行為によって感染するため、性経験のある女性なら、だれでも子宮頚がんになるリスクがあるのです。近年では、性行為開始の低年齢化にともなって、とくに20代~30代の若年層でも子宮頸がんが増えています。ただし、HPVに感染したとしても、そのすべてががんへと進行するわけではありません。HPVへの感染後、そのほとんどは免疫機能によって自然に排除されます。排除できなかった一部のHPVが細胞にとどまりつづけることで、数年~数十年もの長い時間をかけてゆっくりとがんへと進行するのです。初期の子宮頸がんは、無症状のことが多いため、ほとんどの場合、検診を受けて発見されます。
子宮頸がん検診について
子宮頸がん検診は、子宮頸がんの有無だけでなく、がんに進行する前の段階(前がん病変)を早期に発見することを目的とした検診です。
子宮頸がんは、20代~30代という若い世代でもかかりやすいため、20歳以上の女性に対し、2年に1回の検診が推奨されています。なぜ検診間隔が2年に1回なのかというと、子宮頸がんは進行がとても遅いからです。前がん病変から浸潤がん(治療の難しい進行がん)になるまでに、少なくとも2~3年はかかります。また、検診間隔が1年に1回でも2年に1回でも、がんの進行予防に対する効果は同じというデータがあることも理由です。
子宮頚がんに進行する前の段階で異常を発見できれば、最小の処置によって治癒できることから、不正出血や痛みなどの症状がなくても、定期的に子宮頸がん検診を受けておく必要があるのです。
20歳になったら配布される無料クーポン券を活用して子宮頸がん検診を受診しましょう
厚生労働省は、女性への子宮頸がんに対する正しい知識と、子宮頸がん検診の普及を目的として、20歳を迎える全ての女性に対し「子宮頸がん検診無料クーポン券」を配布しています。
子宮頸がん検診無料クーポン券は、居住している自治体を通して自宅に郵送されるしくみです。クーポン券を利用すれば、地域の対応医療機関で子宮頸がん検診を無料で受診することができるので、20歳を迎えたら子宮頸がん検診を受診しましょう。
子宮頸がん検診無料クーポン券が自宅に届いたら、同封されている「医療機関一覧」のなかから、希望する医療機関を選び、クーポン券を提出して受診します。受診する医療機関によっては、「子宮頸がん検診無料クーポン券を使って検診を受けたい」と事前に伝え、予約する必要があります。受診する前に先方に確認しましょう。なお、内容の詳細や受診期間などは、各自治体によって異なります。詳しくは、各自治体のがん検診担当窓口で確認してください。また、対象年度の途中で異なる自治体へ引っ越しした場合や、クーポン券を紛失してしまった場合には、自治体の担当窓口に連絡をして再発行を受ければ、検診を受けられます。
市町村が実施するがん検診の機会も活用しましょう
20歳の女性を対象に配布される無料クーポンとは別に、ほとんどの市町村では、検診費用の一部または全額を公費で助成するがん検診事業を実施しています。このがん検診事業は、厚生労働省の働きかけによって各市町村が独自に実施しているもので、20歳以上の女性に対し、およそ2年に1回の受診機会を設けることを目標としています。ただし、受診対象者や受診頻度、公費で補助する範囲は全国一律ではなく、それぞれの市町村によって異なります。市町村のがん検診の実施状況や負担額、助成を受けるための条件や申請・利用方法などについては、各市町村のがん検診担当窓口で確認する必要があります。
検査の内容は?
子宮頸がん検診は、初期の子宮頸がんや、その兆候を発見することができる唯一の機会です。
貴重な機会とはいえ、初めて検診を受けるときは、だれしも不安を抱くものです。安心して検査を受けられるよう、一般的な検査の流れや、検査時の痛みなどについて知っておきましょう。
子宮頸がん検診では、基本的な問診の後、内診台という専用の台に上がった状態で、医師による内診と細胞診を受けます。
個室内で下着を脱ぎ、内診台にすわると、台ごと脚が開いて検査の体勢になります。心理的に抵抗があるかもしれませんが、多くの場合、患者の気持ちに配慮して、医師や看護師との間はカーテンで仕切られており、目が合わないように工夫されています。また、ゆったりしたスカートであれば、着用したままで検査を受けられるので、心理的抵抗感が薄れるでしょう。
準備ができたら、医師が視診や触診によって子宮や子宮頚部にはれや出血がないかなどを確認します。最後に、細胞診を行います。膣鏡(ちつきょう)という細長いクチバシ状の器具を膣に挿入し、膣を開いてから、子宮の入り口付近の細胞を専用のブラシでかるくこすりとります。緊張して身がまえてしまいそうになりますが、できるだけリラックスして下半身の力を抜くようにしたほうが、らくに検査を受けられるでしょう。個人差はあるものの、子宮の入り口付近は痛みの感覚が弱いため、違和感を抱くことはあっても、痛みは感じにくいといわれています。ただし、検査後に若干出血する場合があるので、薄手のナプキンをつけていくと安心です。なお、生理中でも検査は可能ですが、精度が劣るおそれがあるため、自治体によっては生理中の検査を不可としている場合もあるので注意してください。
細胞診は検査結果が出るまで数日かかるため、検査を受けた医療機関に後日来院して受け取ります。医療機関によっては検査結果を郵送してもらえる場合もあるので、郵送を希望する場合は医療機関に相談してみましょう。検査によって、もし異常が見つかった場合は、精密検査や適切な治療を行うことになります。
まとめ
子宮頸がんは、性経験のある女性なら、だれでもかかる可能性のある病気です。忙しく過ごす日々のなかで、これまで検診の機会をのがしてきたという人も、「若いから自分は大丈夫」と考えずに、定期的な検診を習慣づけましょう。
子宮頸がん検診は、職場の健康診断や自費による受診だけでなく、20歳を迎えた女性に配布される子宮頸がん検診無料クーポン券を使えば、自己負担なしに受けることができるほか、市町村が行うがん検診の機会を利用できる場合もあります。
自分自身のいのちや、大切な人との未来を守るためにも、子宮頸がん検診を受けましょう。