在宅ケアにおける「褥瘡の実態」と「これから」

2020.03.03

  • 床ずれケア
#症例 #オピニオンリーダーインタビュー
在宅ケアにおける「褥瘡の実態」と「これから」

北海道医療大学訪問看護ステーション 皮膚・排泄ケア認定看護師 佐藤 明子 様に在宅における褥瘡の現状や、これからの褥瘡予防についてお話しいただきました。

北海道医療大学 訪問看護ステーション 皮膚・排泄ケア認定看護師

佐藤 明子様

北海道医療大学地域包括ケアセンターの機能

4人に1人が高齢者という超高齢社会を迎えた今、厚生労働省が推進しているのが、病院や福祉施設を中心に提供してきた医療、介護、予防、生活支援などのサービスを、在宅でも一貫したケアを受けることができる「地域包括ケアシステム」の構築です。
こうした在宅療養を推進する社会的状況に対応するため、2015年12月、札幌市北区あいの里に、在宅ケアと多職種連携教育の拠点となる『北海道医療大学地域包括ケアセンター』が開設されました。地域包括ケアセンターとは、行政が運営する地域包括支援センターとは異なり、学校法人である北海道医療大学独自のものです。
地域包括ケアセンター内には、2016年2月に訪問看護ステーションと居宅介護支援事業所が、2019年5月には在宅歯科診療所が開設されました。
当センターは、下表のように4つの機能を持っています。

センター写真(合体)

地域包括ケアセンター4つの機能

在宅褥瘡は本当に多いのか

私が病院で褥瘡管理者をしていた頃、在宅で訪問看護を利用している療養者さんの褥瘡発生率が非常に高いという調査結果を目にしました。そのため、患者さんが退院する際には、病棟での褥瘡予防対策ケアをご自宅でも継続できるように説明をしていました。
しかし、つながりのある複数個所の訪問看護ステーションでは、療養者さんの褥瘡発生リスクが高いにも関わらず、褥瘡が発生することはほとんどありませんでした。
この頃から療養者さんの褥瘡発生率は本当に高いのか? と疑問を持つようになりました。

在宅ケアにおける体位変換の実施

在宅ケアにおいて、夜間の体位変換実施率が低いという調査結果を拝見したことがあります。また、体位変換の実施率が低いことが、療養者さんの褥瘡発生率を上げているのではないかという意見も聞いたことがあります。
しかし、夜間、筋緊張もほぐれ、リラックスして寝ている療養者さんに、睡眠を妨げるような体位変換を行うことが、本当に褥瘡の予防につながっていたか疑問が残ります。
また、病院の看護体制は三交代制や二交代制で、看護師や看護助手などが代わる代わる体位変換を行っています。しかし、在宅では家族介護者さんが24時間一人で介護し、睡眠時間を削って体位変換を行うこともあります。家族介護者さんの介護負担感の増加は、在宅での療養生活を継続できるかを大きく左右してしまうため、かねてより危機感を持っていました。

介護保険改正での福祉用具貸与制度の削減

2006年の介護保険改正では、要支援、要介護1の方は、体圧分散マットレスをはじめ、介護ベッド、車椅子などのレンタルが利用できなくなりました。
介護保険の財政的状況はひっ迫しており、今後も対象者の絞り込みが実施される可能性は十分にあります。福祉用具を適切に活用することが褥瘡の予防につながるという根拠が必要だと考えていました。

実際に訪問調査へ

北海道医療大学大学院看護福祉学研究科へすすみ、教員の先生方より御指導を頂きながら、調査へ乗り出しました。
私のこだわりは、書面によるアンケート調査ではなく、「介護される人」と「介護する人」のところへ実際に足を運び生の声を聞き、ケアの実際を拝見したいというところでした。
調査の対象としたのは、自力体位変換が行えない療養者さんと、介護している家族介護者さんでした。複数の訪問看護ステーションの管理者やスタッフの皆様にもご協力をいただき、訪問看護に同行させていただきました。

ベッド(合体,キャプ入り)

そして、訪問看護師の方々がケアを行っているときに、褥瘡発生危険要因の評価、褥瘡好発部位の皮膚の状態、使用しているベッドやマットレス、マットレスの機能や設定などを観察しました。

実際に使用している褥瘡対策グッズも見せていただきました。介護をしていく中で、クッションの硬さや柔らかさ、通気性、ご本人が好みの触り心地、大きさなど試行錯誤を繰り返し、様々な工夫が施されていました。

クッションの工夫(合体、キャプ入り)

訪問看護の時間とは別にお時間をいただき、家族介護者さんにどのような褥瘡予防対策を行っているのか、インタビューをさせていただくと、いろいろなことが分かりました。

意図的な体位変換と生活の中で姿勢が変化するとき

体位変換をしているか否かと質問すると、多くの家族介護者さんが「病院みたいに左右の体位変換はしていない」と答えました。しかし、タイムスタディで、一日の生活をお聞きすると、食事・休息・テレビ鑑賞・睡眠など、生活の中で体勢が変化していました。
体位変換というと、家族介護者さんは病院で看護師がしていたような左右の側臥位、仰臥位などの体位変換をイメージしており、生活の中での体勢の変化は、体位変換とは捉えていないことがわかりました。
「在宅で体位変換をしているか?」という質問では、やはり実態は把握できないことが分かりました。

タイムスタディ記入例(表題入り)

夜間の同一体位継続時間は約8 時間と長かったが
褥瘡はなかった

就寝前にナイトケアを行った後は、介護する人も介護される人も、朝まで就寝されている人がほとんどでした。
自動体位変換機能付のエアマットレスを導入していない、または導入したがその機能を使用していない療養者さんは、夜間同一体位継続時間が平均7.57±2.84(SD)時間だったにもかかわらず、褥瘡を保有していませんでした。

褥瘡のある療養者さんの人数は少なかった

今回は褥瘡発生リスクの高い療養者さんを対象とした調査でしたが、褥瘡を保有している方は少ないことが分かりました。
その理由として、9割の療養者さんが、体圧分散性に優れたエアマットレス、交換型のウレタンフォームマットレスなどを、介護保険の福祉用具貸与サービスを利用するなどして導入できていたからだと推測します。

パッド+使用状況

これからの在宅褥瘡予防対策

平成28年国民生活基礎調査の結果によると、在宅における「介護する人」は同居家族がほとんどで、「介護される人」との続柄は、配偶者25.2%、子21.8%、子の配偶者9.7%、その他の親族や父母1.9%と、全体の約6割を占めています。
また、「介護する人」も高齢化しており、70歳以上の方が占める割合は、男性41.6%、女性36.8%となっています。
介護内容は、体位変換、排泄介助、食事介助、洗顔、着替えと多岐に渡りますが、「介護する人」の半数以上が家族介護者さんのみで実施しており、特に夜間の介護は家族に委ねられているのが実情です。
自宅で過ごしたい療養者さん、その思いを叶えてあげたい家族介護者さん、どちらも疲れてしまっては、在宅での生活を継続することはできません。
在宅の褥瘡予防対策では、家族介護者さんも、療養者さんも、共に夜間休める環境を調整することが重要なのではないでしょうか。

在宅ケアに従事される看護職の皆様へ

医療にはエビデンスが重要です。ガイドラインやマニュアルに沿ったケアは大切ですが、そのエビデンスによる普遍性を理解し、療養者さんの個別性も考えた上でケアを見直していくことが大変重要です。
ケアの見直しには、家族介護者さん、療養者さんに、何故そのケアが必要なのか、根拠をお伝えすることが必要なのではないでしょうか。
日本看護協会ホームページ内の「看護者の倫理綱領」には、『看護は、あらゆる年代の個人、家族、集団、地域社会を対象とし、健康の保持増進、疾病の予防、健康の回復、苦痛の緩和を行い、生涯を通してその最期まで、その人らしく生を全うできるように援助を行うことを目的としている。』と記載されています。
このことが実践できるように、私は3つの「LIFE」=「生命」「生活」「人生」を意識してケアをしています。
看護師として「生命」にかかわるケアはもちろん、療養者さんを「生活者」としてとらえ、家族や地域の方々との「生活」、そしてその人自身の「人生」を理解することが重要だと考えるからです。

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